公開 2026.08.16 ・ 9分で読める
東大おうち塾コラム
帰国後に日本の一般入試を受ける。海外にいるうちにやっておくこと
帰国枠を使わず、帰国後に日本の一般入試を受ける場合に何が問題になるかを整理しました。高校受験で海外期間の内申がどう扱われるか、大学受験の出願資格、帰国時期と学年の接続まで、都の実施要綱と文部科学省の資料で確認した範囲で書いています。
野村 理玖
東大おうち塾 代表 / 東京大学 博士課程 / 公開 2026.08.16 / 9分で読める
目次
海外在住のご家庭向けの情報は、そのほとんどが帰国枠(帰国生入試)の話です。ところが実際には、帰国枠を使わずに帰国後の一般入試を受ける生徒のほうが多くいます。在留年数が足りない、帰国の時期が条件に合わない、志望校に帰国枠がない、といった理由です。
この場合に効いてくるのは出願資格ではありません。日本にいた生徒が持っていて、海外にいた生徒が持っていないものです。具体的には次の3つです。
内申(調査書の評定)。高校受験で使われますが、海外にいた期間は日本の中学校の評定が存在しません。
出願資格。大学受験では、外国の学校で12年の課程を修了したかどうかが問われます。
学習範囲の連続性。現地校と日本のカリキュラムは進度も順序も違うため、学年ではなく単元単位で穴が空きます。
この3つは、帰国してから対応しようとすると間に合わないものと、海外にいるうちにしか手を打てないものが混ざっています。順に見ていきます。
第01章高校受験で、海外にいた期間の内申はどう扱われるか
結論から書くと、評定が書けない教科は空欄のまま提出でき、そのぶんは現地校の成績資料で補います。ただし、その資料はご家庭で用意します。
東京都立高校の場合、実施要綱に手続きが明記されています。令和8年度の実施要綱では、調査書の作成について次のように定めています。
令和7年4月1日以降帰国し、現地校から編入学した者については調査書の所定欄のうち記入できる事項についてのみ記入する。各教科の学習の記録欄に一部でも記入できない場合、現地校の成績資料の写しを添付する。その際、現地校の成績資料の写しの添付が不可能な場合は、その旨を明らかにした「理由書」(様式任意)を添付する。
評定が空欄(斜線)になった教科がある受検者の点数については、同じ要綱の別の箇所に定めがあります。成績一覧表が提出されていない受検者や、評定が斜線になっている教科がある受検者については、学力検査の得点など参考にできる資料を活用して、その都立高校が調査書点を算出します。
出典: 東京都教育委員会 令和8年度 都立高校 入学者選抜の実施要綱(2026年8月16日確認)
ここから決まる行動
要綱が求めているのは「現地校の成績資料の写し」です。帰国してから現地校に連絡して取り寄せるのは、学校によっては時間がかかり、閉校や制度変更で入手できないこともあります。
つまり現地校の成績資料は、在籍しているうちに手元に集めておく必要があります。学期ごとの成績表、出席の記録、在籍証明。この3つを原本またはPDFで保管しておけば、帰国後の手続きで困りません。
なお、都立高校の一般入試(全日制)では、学力検査の得点と調査書点の比率は原則として7対3です。内申が不利になりやすい海外組にとって、学力検査で取れる7割の比重は大きい、という読み方ができます。
調査書の扱いは都道府県ごとに違います。この記事は東京都の要綱を例にしています。志望する自治体の実施要綱を必ずご自身で確認してください。
東京都・神奈川県・千葉県で扱いがどう違うかは海外にいた期間の内申はどうなるかに、それぞれの要綱の原文を並べてまとめました。
第02章大学受験は、まず出願できるかどうかを確認する
大学の一般選抜では、そもそも出願資格を満たしているかが先に問われます。日本の高校を卒業していない場合、次のいずれかに当てはまる必要があります。
資格の種類 | 内容 |
|---|---|
外国の12年の課程を修了 | 外国において学校教育における12年の課程を修了した者 |
12年未満の課程の場合 | 指定された準備教育課程、または指定された研修施設の課程を修了する必要がある |
インターナショナルスクール | 国際的な評価団体(WASC、CIS、ACSI、NEASC、Cognia、COBIS)の認定を受けた教育施設の12年の課程を修了した者 |
高卒認定 | 高卒認定試験に合格した者。18歳未満の場合は18歳に達してから |
出典: 文部科学省 大学入学資格について(2026年8月16日確認)
注意が必要なのは、国によって学校制度の年数が違うことです。現地の高校を卒業しても、日本から見て12年目の課程にあたるかどうかは国と学校によります。文部科学省の説明でも、正規の学校教育にあたるか、何年目の課程かは各国の大使館などに問い合わせるよう案内されています。
ここが確定しないと、志望校を絞る作業に入れません。高校2年生の段階で一度確認しておくと、あとの計画が組みやすくなります。
第03章中学受験、高校受験、大学受験で何が変わるか
同じ「帰国後の一般入試」でも、詰まる場所が段階ごとに違います。中学受験は4科の演習量、高校受験は内申、大学受験は出願資格と共通テストです。
中学受験 | 高校受験 | 大学受験 | |
|---|---|---|---|
最大の壁 | 日本独自の解法と、4科の演習量 | 海外期間の内申がないこと | 出願資格の確認と、共通テストの対策量 |
海外にいるうちにやること | 算数の解法を先取りし、国語の記述に慣れる | 現地校の成績資料を集める。主要3科の未習範囲を埋める | 12年の課程にあたるかを確認する。英語以外の科目を落とさない |
帰国後にしかできないこと | 志望校の過去問演習、模試での立ち位置確認 | 編入先の中学校での定期テスト、面接練習 | 共通テスト形式の演習、二次対策 |
時間の目安 | 帰国の1年以上前から算数を動かす | 帰国後の学期に間に合うよう主要3科を戻す | 高2までに出願資格を確認し、高3で演習量を確保する |
中学受験は、帰国枠を使わない場合の負担が一番大きくなります。日本の受験算数は現地校の数学と別物で、演習量そのものが必要になるためです。海外にいる時点で受験を決めているなら、算数だけは早めに動かしてください。
高校受験は、内申の問題があるぶん、学力検査で取り切る設計に寄せることになります。上に書いたとおり都立の全日制は原則7対3なので、学力検査の比重は小さくありません。
第04章カリキュラムの差は、学年ではなく単元で見る
現地校と日本のカリキュラムは、扱う順序が違います。そのため「1学年遅れている」といった見方をすると、実際の穴とずれます。
算数と数学
進度差ではなく順序差なので、得意な生徒でも未習の単元が飛び飛びに残ります。学年でまとめず、単元ごとに履修済みかどうかを一覧にしてください。日本の教科書の目次をそのままチェックリストにするのが早い方法です。
国語
会話に不自由がなくても、説明文の読解と記述で手が止まります。日本の入試の記述は、本文の言葉を使って条件どおりに答える形式です。内容が分かっていても書き方を知らないと得点になりません。短い記述問題の添削を、週に決まった回数だけ続ける形から始めてください。
英語
一般入試では、英語が最大の武器になります。ただし話せることと入試で点が取れることは別です。日本の入試特有の文法問題や和訳、英作文の採点基準に慣れる時間が要ります。
理科と社会
見落とされやすいのがここです。現地校で日本の歴史や地理を扱わないため、範囲がまるごと空きます。中学受験と高校受験では配点があるので、帰国の半年前には手をつけておきたい科目です。
第05章海外から受講するときに確認すること
オンラインで日本の指導を受ける場合、指導の質より先に、続けられる条件が揃うかどうかで結果が決まります。塾を比較するときは次の5点を聞いてください。
確認すること | なぜ効くか | 東大おうち塾の場合 |
|---|---|---|
受講できる時間帯 | 現地の平日夜に授業を置けないと、生活が崩れて続かない | 時差に合わせて時間帯を調整。講師側の可能な枠から選ぶ形 |
振替の条件 | 現地の行事や停電で欠席は必ず起きる | 24時間前までの連絡で振替が可能 |
講師の交代 | 相性が合わないまま続けるのが一番の損失 | いつでも無料で変更可能 |
教材の入手 | 海外では日本の教材が届かない、届くのが遅い | 学校の教材と市販教材を使用。教材費は別途不要 |
料金に含まれる範囲 | 入会金や管理費が後から出てくると総額が読めない | 月額管理費なし。入会金と授業料のみ |
時差については、何時間差までなら大丈夫かという一般的な答えはありません。日本との時差が大きい地域でも、現地の朝に日本の夕方を当てる形で成立することがあります。実際の時間割を作ってみて、生活が回るかどうかで判断してください。
海外にお住まいの方向けの指導内容は海外子女・帰国子女向けのページにまとめています。講師の選び方そのもので迷っている場合は、東大生の家庭教師が合うケースと合わないケースも参考にしてください。
第06章東大おうち塾で対応できる範囲と、できない範囲
東大おうち塾が対応するのは、帰国後の一般入試に向けた中学受験、高校受験、大学受験の指導と、日本のカリキュラムとの差を埋める学習設計です。出願手続きの代行、合否の判定や保証、現地校の課題支援、対面での指導は行っていません。
対応できること | 対応できないこと |
|---|---|
帰国後の一般入試に向けた中学受験、高校受験、大学受験の個別指導 | 出願書類の作成代行や、学校への手続きの代行 |
国語の記述と作文の添削、主要教科の未習範囲の補充 | 各校の合否判定や、合格の保証 |
日本のカリキュラムとの差を埋める学習計画の設計 | 現地校のカリキュラムそのものへの対応(現地校の課題支援は範囲外) |
時差に合わせたオンラインでの1対1指導 | 対面での指導、現地への講師派遣 |
調査書や出願資格の最終的な確認は、ご家庭と学校や教育委員会のあいだで行っていただく必要があります。相談の場で一緒に読むことはできますが、こちらが最終的な判断を代行できるわけではありません。
第07章よくある質問
海外にいた期間の内申がありません。高校受験で不利になりますか。
評定が書けない教科は調査書の欄が空欄になり、そのぶんは現地校の成績資料の写しで補います。東京都立高校の令和8年度実施要綱では、評定が斜線になっている教科がある受検者について、学力検査の得点など参考にできる資料を活用して各都立高校が調査書点を算出すると定めています。なお都立の全日制では学力検査と調査書点の比率が原則7対3のため、学力検査の比重が大きくなります。扱いは自治体ごとに違うので、志望する自治体の要綱を確認してください。
現地校の成績資料は、いつまでに用意すればいいですか。
在籍しているうちに集めてください。帰国後に取り寄せると時間がかかり、学校によっては入手できないこともあります。学期ごとの成績表、出席の記録、在籍証明の3つを原本またはPDFで保管しておくと、帰国後の手続きで困りません。
海外の高校を卒業しても、日本の大学の一般選抜に出願できますか。
外国において学校教育における12年の課程を修了していれば出願資格があります。12年未満の課程の場合は、指定された準備教育課程または研修施設の課程を修了します。国際的な評価団体(WASC、CIS、ACSI、NEASC、Cognia、COBIS)の認定を受けた教育施設の12年の課程を修了した場合も資格が認められます。何年目の課程にあたるかは国と学校によるため、文部科学省は各国の大使館などへの確認を案内しています。
帰国枠(帰国生入試)は使わないほうがいいのですか。
そうではありません。条件を満たすなら選択肢に入ります。ただし在留年数や帰国時期の条件が合わない、志望校に帰国枠がない、といった理由で使えない家庭も多くあります。この記事は、帰国枠を使わずに一般入試で受ける場合を前提に書いています。
現地校と日本の進度が違います。何から埋めればいいですか。
学年ではなく単元で見てください。現地校と日本のカリキュラムは順序が違うため、得意な生徒でも未習の単元が飛び飛びに残ります。日本の教科書の目次をチェックリストにして、履修済みかどうかを単元ごとに確認するのが早い方法です。理科と社会は範囲がまるごと空きやすいので、帰国の半年前には手をつけてください。
時差が大きい地域からでも受講できますか。
受講できます。時差に合わせて授業の時間帯を調整しており、24時間前までのご連絡で振替も可能です。何時間差までなら可能という一律の基準はないため、実際の生活時間で時間割を組んでみて判断してください。
第08章先に決めるのは、順序
帰国後の一般入試で苦しくなる原因は、学力の不足よりも順序の誤りにあります。帰国してから情報を集め始めると、現地校の資料が手に入らない、出願資格の確認が間に合わない、といった形で選択肢が減ります。
海外にいるうちにできるのは、資料を集めること、出願資格を確認すること、未習の単元を洗い出すことです。この3つを先に済ませておけば、帰国後は学習そのものに時間を使えます。
東大おうち塾では、海外にお住まいのご家庭向けに初回60分の無料学習相談を行っています。現在の学年と帰国予定、志望する受験の段階をお聞きして、次の3か月で何をするかまで具体化します。申し込みは海外からの無料学習相談フォームからどうぞ。
筆者
野村 理玖
東大おうち塾 代表 / 東京大学 博士課程
公開 2026.08.16
麻布高校卒業、東京大学 博士課程在学。公認会計士試験合格。海外在住のご家庭からの学習相談を受けるなかで、帰国枠を使わない層の情報がほとんど出回っていないことを知り、この記事をまとめました。