公開 2026.08.23 ・ 10分で読める
東大おうち塾コラム
文系数学の定石とは|整数・図形・数列で使う型の一覧
定石とは「この形が来たらこれを出す」という対応表です。整数なら約数倍数・不等式・合同式の3つ。図形なら90°を見たら内積0。単元ごとに実際の型を書き出しました。持っていない人は毎回ゼロから考えることになります。
野村 理玖
東大おうち塾 代表 / 東京大学 博士課程 / 公開 2026.08.23 / 10分で読める
定石を持っていない人は、初めて見る問題で毎回ゼロから考えることになります。試験時間の中では、それでは間に合いません。
ここでは単元ごとに、実際に使う型を書き出します。
第01章定石とは何か
定石とは、問題の形と最初の一手を対応させた約束事です。考える手間を減らし、その分の時間を本当に考えるべき部分に回すための道具です。
たとえば図形の問題で90°が出てきたとします。ここで「垂直だから内積は0」と即座に書き出せるなら、そこから先に時間を使えます。毎回「垂直をどう式にするか」から考えていては、そこで数分が消えます。
定石は暗記の対象ですが、導けるようにしておくと強くなります。内積の定義に cos θ が入っていると知っていれば、cos 90° は 0 なので垂直なら内積も 0 になると、その場で式を導けるからです。
覚えた型なのか、作れる型なのか。初めて見る問題で差が出るのはここです。
第02章整数問題の定石は3つ
整数問題で手が止まらないための方針は、約数と倍数、不等式、合同式の3つに整理できます。どれを使うかを最初に決めます。
1. 約数と倍数で攻める
問題文に素数が出てきたときによく使います。文字はすべて整数として、次のようなことが成り立ちます。
素数 p を p = ab と表せるなら、a は ±1 か ±p のどれか。
mn が p の倍数なら、m と n の少なくとも一方が p の倍数。
連続する n 個の整数の積は、n の階乗で割り切れる。
積の形に持ち込めれば、取りうる値が一気に絞れます。だから「因数分解できないか」を先に疑います。
2. 不等式で範囲を絞る
候補が無限にあるように見えても、範囲を絞れば有限個に落ちます。使う手は決まっています。
対称性があるなら、変数の大小を一方に決めてしまう。
自然数なら1以上。整数なら絶対値が0か1以上。
2次方程式の形なら、判別式が0以上という条件を持ち出す。
根号の中身が平方数になる条件を使う。
3. 合同式で余りを見る
3つの中で最も強力です。等式が成り立たないことを示すときにも使えます。
迷うのは法の選び方です。まず、問題に出てくる数のどれかを法として試します。うまくいかなければ、その倍数か前後の数を試します。ここは経験がものを言う部分で、試行錯誤が要ります。
第03章図形・ベクトルの定石
図形は「条件をどう式にするか」の対応表です。見た瞬間に書き出せる形にしておきます。
問題文にこれが出たら | 最初に書くもの |
|---|---|
90°、垂直 | 内積 = 0 |
円が絡む | 方べきの定理、または中心角と円周角 |
3点が一直線上 | ベクトルが実数倍、または傾きが等しい |
面積の比 | 底辺の比、または高さの比に分解 |
最大・最小 | 1文字に減らして微分、または相加相乗 |
角の二等分線 | 角の二等分線の定理、または内積で角度を出す |
こうした対応関係を覚えているかどうかで、最初の1分の使い方が変わります。
第04章数列・確率の定石
数列は「差を見るか、比を見るか、ずらすか」の3択から入ります。
問題文にこれが出たら | 最初に書くもの |
|---|---|
規則が見えない数列 | 階差を取る |
漸化式に n が混ざる | 両辺を割る、または置き換える |
和が絡む | 項をずらして引く |
整数と数列 | 実験して規則を見つけてから証明 |
確率で場合が多い | 余事象、または漸化式を立てる |
確率の最大値 | 隣同士の比を取って1と比べる |
確率で漸化式が出てくるのは、n 回目と n+1 回目の関係を書けるときです。場合分けが増えてきたら、この形を疑います。
第05章定石の覚え方
定石は読んで覚えるものではなく、書いて覚えるものです。手が勝手に動くようになるまで繰り返します。
手順は3つです。
問題を解く。詰まったら、どの型を出すべきだったかを確認する。
「この形が来たらこれを出す」の1行にして、自分のノートに書き足す。
同じ問題を後日、白紙から解き直す。型が出てくれば身についている。
参考書を読むだけでは型は手に入りません。理由は、「解説は分かるのに解けない」で説明しています。読んで分かることと、白紙から書けることは別の能力です。
自分のノートに1行ずつ足していくのが大事です。他人がまとめた一覧は、読んだ時点では理解できても、試験中には出てきません。自分が詰まった経験と結びついた型だけが残ります。
第06章よくある質問
定石は何個くらい覚えればいいですか。
数を目標にしないでください。過去問と模試で自分が詰まった型だけを足していくと、文系数学なら自然に50から80行くらいになります。最初から網羅しようとすると続きません。
定石を覚えると、考える力がつかないのでは。
逆です。型を出すところで時間を使わなくなるぶん、本当に考えるべき部分に時間を回せます。入試問題は、型を組み合わせた先に考えどころが置かれています。
青チャートのような網羅系をやれば身につきますか。
例題を解くだけでは足りません。解いたあとに「この形が来たらこれを出す」の1行に落として、自分のノートに書き足すところまでやってください。網羅系は型の供給源であって、型の定着装置ではありません。
公式は覚えているのに使えません。
公式を使えない場合は、導出を理解できているか確認してください。導出まで戻ると、その公式がどこから来たかが分かり、どの場面で使えるかが見えます。忘れても導き直せるようにもなります。
第07章まとめ
定石とは「この形が来たらこれを出す」という対応表。
整数は約数倍数・不等式・合同式の3つから入る。
図形は90°なら内積0、円なら方べきか中心角。数列は階差・ずらして引く。
読んで覚えるのではなく、自分のノートに1行ずつ足して書いて覚える。
東大おうち塾では、文系数学の専門指導で単元ごとの型を渡し、手が動くまでの反復まで一緒に回します。初回60分の体験授業は無料です。いまの答案を見せていただければ、どの型が足りないかをその場でお伝えします。
文系数学に時間を使う価値は、「文系数学で一番差がつく理由」で、開示得点をもとに説明しています。
筆者
野村 理玖
東大おうち塾 代表 / 東京大学 博士課程
公開 2026.08.23
麻布高校卒業、東京大学 博士課程在学。公認会計士試験合格。認知心理学に基づいて自分の勉強のやり方を組み立て直した経験から、東大おうち塾を立ち上げました。