公開 2026.06.11 ・ 7分で読める
東大おうち塾コラム
得意科目がなくても東大には合格できる
〜全科目を平均以上に伸ばした受験戦略〜 突出した武器がなくても、東大は総合点勝負。どの科目からも逃げず、隙間時間を積み重ね、最も伸びるところに時間を投資し続けて合格した受験戦略を紹介します。

E.T(理科二類)
東京大学 理科二類 / 東大おうち塾 講師 / 公開 2026.06.11 / 7分で読める

第01章第1章 武器がないからこそ見つけた自分なりの戦い方
東京大学の合格者と聞くと、数学が圧倒的に得意な人や、英語で高得点を連発する人を想像する方が多いかもしれません。実際、そうした受験生はたくさんいます。東大模試で数学全国上位に入る人、英語で毎回80点や90点を超える人、理科だけで周囲を圧倒する人。私の周りにもそういう人はたくさんいました。しかし、私はそういうタイプではありませんでした。
数学が飛び抜けて得意だったわけではありません。英語が得点源だったわけでもありません。物理や化学が大好きだったわけでもありません。高校時代の成績は学年上位15〜20%程度。トップ層ではありませんでしたし、東大模試でもA判定を取ったことはありません。現役時代はほとんどE判定でした。
正直に言うと、自分には「これだけは誰にも負けない」と言える武器はありませんでした。当時はそれがコンプレックスでもありました。東大を目指すなら数学が得意でなければいけないのではないか。英語で高得点を取れなければ勝負にならないのではないか。理科で圧倒的な得点源を作らなければいけないのではないか。そんなことを何度も考えました。
しかし、浪人を経て合格した今だから思うことがあります。それは、「武器がないことは必ずしも不利ではない」ということです。むしろ私は、武器がなかったからこそ東大に合格できた部分もあったと思っています。
東大受験は、一科目だけで決まる試験ではありません。もちろん数学で大きく稼げる人は有利ですし、英語で高得点を取れる人も強いです。しかし最終的には総合点勝負です。どれだけ得意科目があっても、他の科目で大きく失点してしまえば合格は遠のきます。
私は安心して任せられる科目がありませんでした。だからこそ、どの科目からも逃げられませんでした。英語もやる。数学もやる。国語もやる。理科もやる。全科目と向き合うしかありませんでした。結果として、それが私の受験戦略になりました。
私は「全科目を平均以上に仕上げる」という方針で勉強していました。数学で70点を取ることよりも、全科目で安定して点数を積み重ねることを意識していました。受験生の中には、「苦手科目は捨てて得意科目を伸ばそう」と考える人もいます。もちろんそれが正解になるケースもあります。しかし私の場合は違いました。そもそも得意科目がなかったからです。だから苦手科目を放置しませんでした。
英語は鉄壁を使って単語力を固め、音読とリスニングを継続しました。数学は解法を体系的に整理し、問題ごとの考え方を理解することを意識しました。国語は模範解答を比較しながら答案作成を研究しました。物理と化学は演習量を重視し、同じ問題を何度も解き直しました。今振り返ると、特別な勉強法をしていたわけではありません。むしろ当たり前のことを徹底していただけだと思います。
第02章第2章 野球を続けながら身についた「隙間時間の力」
ただ、一つだけ高校時代から徹底していたことがあります。それは、「鉄壁だけは毎日やる」ということでした。
私は高校時代、野球中心の生活を送っていました。朝練習があり、放課後も練習があり、土日も試合があります。勉強時間は決して多くありませんでした。だからこそ私は、どれだけ忙しくても続けられるものを作ろうと思いました。それが鉄壁でした。
どんなに疲れていても鉄壁を開く。どんなに忙しくても鉄壁を開く。それだけは決めていました。通学は自転車でした。当時の私は信号待ちの時間にも鉄壁を見ていました。前かごに鉄壁を入れていたので、赤信号になるたびに開いていました。今考えると少し変だったかもしれません。でも本気でした。野球を諦めたくなかったからです。

単語帳『鉄壁』
▲ どんなに疲れていても毎日開き続けた東大英単語熟語集『鉄壁』。隙間時間の相棒だった。
私は野球か勉強かの二択にしたくありませんでした。野球もやりたいし、東大も目指したい。だからこそ隙間時間を使うしかありませんでした。学校の課題もなるべく学校で終わらせるようにしていました。授業中にできるものは授業中にやる。休み時間に終わらせる。家に持ち帰らない。そうすることで家では野球や受験勉強に時間を使うことができました。
当時は単純に野球の時間を確保したかっただけでした。しかし今振り返ると、その経験は受験勉強に大きく役立ったと思います。時間に余裕がない人ほど工夫します。逆に時間がある人ほど時間を無駄にしてしまうことがあります。
私は常に時間が足りませんでした。だからこそ、「5分あったら何をするか」「10分あったら何をするか」を考える癖がつきました。電車を待つ時間。授業開始前の数分。休み時間。信号待ち。一つひとつは短くても、それを積み重ねると大きな差になります。
受験生を見ていても感じますが、成績が伸びる人は隙間時間を大切にしています。逆に伸び悩む人は、まとまった時間がないと勉強できないと思い込んでいることがあります。しかし実際には、勉強は短時間でも積み重ねることができます。
私は野球に時間を使いたかったからこそ、隙間時間を活用する習慣が身につきました。そしてその習慣は、大学受験でも大きな武器になりました。
第03章第3章 得意科目を伸ばすより、合格に近づく勉強をする
また、私が受験生によく伝えていることがあります。それは、「得意科目を伸ばすこと」と「合格に近づくこと」は必ずしも同じではないということです。
受験生はどうしても好きな科目を勉強したくなります。数学が好きなら数学ばかりやる。英語が得意なら英語ばかりやる。もちろん好きな科目を勉強すること自体は悪いことではありません。しかし受験は趣味ではなく競争です。限られた時間の中で、どの勉強が最も合格に近づくのかを考えなければなりません。
例えば偏差値50の科目を60まで上げることは比較的容易です。60から70になると難しくなります。70から75になるとさらに大変になります。学力は上がれば上がるほど伸びにくくなるからです。
仮に偏差値70の英語を75まで上げるために100時間必要だとします。一方で偏差値55の物理や国語なら、その100時間で65や70近くまで伸びるかもしれません。もちろん実際の受験はそこまで単純ではありません。しかし、この考え方は非常に重要です。
私は受験生時代、自分に武器がないことを悩んでいました。しかし今振り返ると、それはむしろ冷静な判断につながっていました。英語が好きだから英語をやる。数学が得意だから数学をやる。そういう発想ではなく、今の自分にとって最も伸びしろがある科目はどこか。どの分野に時間を使えば最も点数が伸びるのか。どこを改善すれば合格に近づくのか。そうしたことを考えながら勉強していました。
受験では努力量も大切です。しかし、それ以上に努力の方向性が重要です。同じ100時間でも、使い方によって結果は大きく変わります。私は受験生時代、参考書選びよりも優先順位を考えることの方が重要だと思っていました。何をやるか。何を後回しにするか。どこに時間を投資するか。それを間違えると、どれだけ努力しても結果につながりません。逆に、正しい方向で努力できれば、飛び抜けた才能がなくても十分戦えます。
実際、東大本番でも私は「この科目で受かった」という感覚はありませんでした。数学だけで合格したわけではありません。英語だけで合格したわけでもありません。理科だけで合格したわけでもありません。どの科目も満点からは程遠いですし、圧倒的な得点を取ったわけでもありません。それでも合格できました。なぜなら、どの科目も大崩れしなかったからです。

E.T 浪人時の東大二次・得点開示(合格)
▲ 本番(合格時)の得点開示。突出した科目はなくても、どの科目も大崩れせず合格最低点を超えられた。
東大入試は全国1位を取る試験ではありません。合格最低点を超える試験です。だからこそ、飛び抜けた武器がない人にも十分チャンスがあります。
私自身、突出した才能で東大に合格したわけではありません。一つひとつの科目と向き合い、隙間時間を積み重ね、自分に足りないものを分析し続けた結果として東大に合格することができました。
東大おうち塾で生徒を指導していても感じることがあります。成績が伸びない生徒の多くは、努力が足りないわけではありません。むしろ真面目に頑張っている生徒がほとんどです。問題は、努力の方向性です。今どこを伸ばすべきなのか。どの教材を優先するべきなのか。どの科目に時間を使うべきなのか。こうした判断は、受験生一人では意外と難しいものです。
私自身も受験生時代は何度も遠回りをしました。だからこそ東大おうち塾では、勉強を教えるだけではなく、一人ひとりの現状を分析し、その人に合った戦略を一緒に考えることを大切にしています。受験に必要なのは、誰かの成功をそのまま真似することではありません。自分に合った勝ち方を見つけることです。
もし今、「自分には武器がない」と悩んでいる人がいるなら、私はこう伝えたいと思います。武器がないことは弱みではありません。全科目と向き合えることは、大きな強みです。飛び抜けた才能がなくても東大には合格できます。大切なのは、自分の現状を正しく把握し、限られた時間を最も伸びるところに投資し続けることです。
私は天才ではありませんでした。だからこそ、自分なりの戦い方を考え続けました。そしてその戦い方が、東大合格につながったのだと思っています。

筆者
E.T(理科二類)
東京大学 理科二類 / 東大おうち塾 講師
公開 2026.06.11
相模原高校出身。中高一貫校(栄光学園)から野球を優先して公立中学・相模原高校へ進学し、一浪を経て東京大学理科二類に合格。東大おうち塾の講師として、学習計画づくりと進路選択のサポートを行っている。